東風
新型コロナウイルス感染症が,感染症法上,5類に移行し,今後の変異株の危険性が未知数であることや“Long COVID”と呼ばれる後遺症の問題等,未解決の問題が山積しているにも関わらず,多くの皆さんは,何となく「フェーズが変わった」感覚をお持ちのことと思います。かくいう私自身も,何となく「緩んできた」感は否めません。油断禁物とはいえ,風向きは変わってきました。
卒業を間近に控え,これから医師としてのキャリアをスタートさせようとしている皆さんにはピンとこないかもしれませんが,今後,今まで以上に求められる医師の資質に,ある種のアナログ感覚があると思います。近い将来,診断や治療の一部は人工知能(AI)や医療用ロボットが肩代わりするようになると思います。ただ,治療法に関する医師からの提案に「・・お願いします」と,かぼそい声で返答を絞り出す患者さんの声色や表情に,何となく台詞とは裏腹のニュアンスや雰囲気を察知できるのは生身の人間だけのように思います。逆に,AIが皮肉や褒め殺しを精緻に理解し駆使するようになったら,医師は本気で転職を考えるべきかもしれません。
今春,坂本龍一さんが旅立たれました。来春,皆様のもとに東風(春の訪れを告げる風Tong Poo)が届くことをお祈りします。
教授(診療科長)石田 康
(『6年生へのメッセージ』より,2023年5月)
略歴
1958年(昭和33年)8月宮崎県延岡市生まれ |
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1985年3月大分医科大学医学部卒業 |
1985年6月宮崎医科大学医学部附属病院研修医(精神科) |
1987年4月医療法人浩然会内村病院医師 |
1988年4月名古屋市立大学医学部研究員(第2生理学教室) |
1989年6月宮崎医科大学医学部助手(精神医学講座) |
1991年10月-1992年8月英国ケンブリッジ大学実験心理学部門訪問研究員 |
1993年7月宮崎医科大学医学部附属病院講師(精神科) |
1998年7月宮崎医科大学医学部助教授(精神医学講座) |
1998年10月-12月ダルハウジー大学医学部薬理学部門(カナダ)訪問研究員 |
2002年11月宮崎医科大学医学部教授(精神医学講座) |
2003年10月宮崎大学安全衛生保健センター分室長併任 |
2011年4月宮崎大学安全衛生保健センター長併任 |
現在に至る |